先日、アルミホイルの動画でアルミニウムは人体にとって有害物質です。「電子レンジで溶け出す可能性もあります」とお伝えしました。
その後に、患者さんから「そのニュース見たことあります」と言われました。
そのニュースは「アルミのやかんにスポーツドリンクを入れて飲んだらアルミニウム が溶け出して中毒を起こした」というものだそうです。
確かに調べると何件かこう言った記事が出てきます。
でも少し違います。どの記事も溶け出した有害物質はアルミニウムではなくて、「銅」です。
今回はそれらの記事を取り上げて検証していこうと思います。
銅中毒とは?
今回紹介する症例はアルミのやかんや水筒の中に酸性の飲み物を入れたことにより生じた中毒症状です。
ですがいずれもアルミニウムが溶け出したわけではありません。
症例の1つはサビに酸性の飲み物が反応して銅が溶け出して起こった中毒。
他の症例は水道水を長年に渡って沸騰させて銅が金属製の容器の内側に付着してそこに酸性の飲み物が反応して起こった銅中毒です。
症例1 やかんとスポーツドリンク
大分県によると、このヤカンは長期間に渡って水道水を沸かすのに使われており、内側が黒く変色していたという。実は水道水には微量の銅が含まれており、繰り返し水道水を沸騰させたことでヤカンの内側に付着・蓄積し、そこに酸性のスポーツドリンクを入れたことで銅が溶け出たと考えられているそうだ。銅は人間が生きていくのに欠かせない物質でもあるが、一度に大量の銅を摂取すると中毒症状が起こる場合があります。
症例2 水筒とスポーツ飲料
実際に患者が飲んだスポーツ飲料は、通常は乳白色のところ、青緑色に変化しており、水筒の内部には小さな褐色の物質がたくさん付着していました。 検査の結果、残っていたスポーツ飲料から高濃度の銅(880μg/g(ppm))が検出され、水筒の内部に付着していた褐色物質の主成分も銅でした。
スポーツ飲料は、当日朝7時半ごろに粉末を水に溶かして水筒に詰めたもので、実際に飲んだその日の午後2時ごろまでそのまま保管されていました。水筒の内部は、一見して破損している様子はありませんでしたが、再現試験をしたところ、内部に青緑色の液体が溜まりました。水筒の製造元に確認した結果、保温のため水筒の壁は二重構造になっており、通常は飲料に接しない二重構造の一部分に銅を使用していることが判明しました。
この事例の原因は、水筒の内部が破損しており、スポーツ飲料を入れて長時間置いたことにより、破損部分から通常は飲料に接しない二重構造の内部に酸性のスポーツ飲料が染み込み、保温構造に使われていた銅が溶出したためと考えられました。
症例3 やかんと乳酸菌飲料
症例4 中華鍋と焼きそば
実はこの店では、普段は小豆を煮るために使っていた銅鍋で、焼きそばを作っていた。そして、その鍋に入れてはいけないものを入れてしまった。
それは焼きそばソース。焼きそばソースは酸性。そして、使用した銅鍋は、長年使用してきたことでたくさんの傷がつき、コーティングがはげ銅がむき出しになってしまっていた。焼きそばソースを使うことで、銅鍋の表面に銅が溶け出したのだ。焼きそばソースの他にも、ケチャップやマヨネーズ、酢なども酸性のため、銅と反応しやすいので注意が必要。
厚生労働省によると、現在、銅鍋などの銅を使った調理器具や食器などは原則、別の金属で全面メッキし、食べ物や飲み物と直接触れることがないよう処置しなければいけない。しかし、金タワシなどでこすりすぎるとメッキが剥げ、銅が露出してしまうので注意が必要。
さらに銅製の調理器具を使用する際は調理したものをすぐに取り出し、入れたままにしないなど銅製品の特性を踏まえた使用を勧めている。
銅中毒が疑わしい時は、十分に吐かせた後、速やかに医師に相談することをお勧めする。
金属製の水筒に飲み物を入れる際の注意点
金属製の水筒に飲み物を入れる際の注意点
①容器の内側にサビや傷がないかよく確認する
②酸性の飲み物を、長時間 金属製の容器に保管しないようにする
(酸性の飲み物とは主に炭酸飲料や乳酸菌飲料、果汁飲料、スポーツ飲料等)
③やかんや水筒などの金属製の保存容器は定期的に新しいものに交換する
あなたも参考にして下さいね。