整形外科に長く勤務しているとよく質問される内容です。
「ヒアルロン酸の注射って聞くのですか?」
これに対する私なりの正直な答えは
「打っている人の約1割の人は効いているようです」
です。
これはあくまで私の肌感です。たまたま私の周りにはこれくらいしか良くなる人がいないだけなのかもしれません。
そこで今回はデータを元にお伝えしていこうと思います。またヒアルロン酸注射とヒアルロン酸サプリメントの違いと、その他にも聞き覚えのあるサプリメントの、グルコサミンとコンドロイチンにも触れていきたいと思います。
ヒアルロン酸とは?
このヒアルロン酸は加齢と共に減少していきます。その結果、肌の張りがなくなったり、関節の動きが悪くなり痛みを感じることがあります。
1関節の痛み軽減効果
ヒアルロン酸には軟骨を保護する作用を持つとされていて、ひざ関節への注入では痛みの緩和や関節の滑りが良くなるといった効果が期待できます。
2美容効果
ヒアルロン酸を深いシワや小ジワ、ほうれい線、くぼみ、ボリューム感が足りない部位に的確に注入することでヒアルロン酸が皮膚の内側から肌を持ち上げ、シワの溝や凹んでいる部位を改善します。
ヒアルロン酸注射は効くのか?
関節内注射は、直接関節包という袋の中に有効成分を注入できるため確実に効果を得られる方法です。ただし美容のシワ取りでも同じですが、いくら患部に直接注入できたとしても体内では循環が起こっているために定期的に注入する必要があります。
ヒアルロン酸のサプリメントは効くのか?
タンパク質はその最小単位であるアミノ酸やアミノ酸が連結したぺプチドは吸収されますが、タンパク質はそのままでは吸収されません。
すなわち、ヒアルロン酸やコンドロイチンはそのままでは吸収されません。グルコサミンもそのままでは吸収されないと考えられます。少なくとも、現時点では吸収されるという明らかな医学的根拠はなさそうです。
ヒアルロン酸・コンドロイチン・グルコサミンは健康食品またはサプリメントとして発売されています。ただし、特定保健用食品(特保)ではありません。「効果不十分」として認定されていません。医薬品でもありません。
そしてメーカーはその効能に関して「腰の痛み・膝の痛み」などに「効く」とは一言も言っていません。「個人の感想です…」と言っています。
日本整形外科学会の見解
ヒアルロン酸の経口摂取の有効性については、現在のところ相反したデータが出されています。ただ有効と結論づけたデータも自覚的に痛みが良くなったというものであって、例えばX線(レントゲン)検査などで改善したというような科学的データではありません。
単純に考えれば、ヒアルロン酸のような巨大分子は腸管で吸収される時分解されてしまう筈ですから、直接関節に行って良くなるとは考えにくいと思います。
一般にサプリメントとして販売されているものは、科学的データとして有効性が認められていないために保険では認められていません。しかし、全く効かないというデータもないのです。あるいは個人差があるということも可能性としてはありうると思います。
従って日整会では、『これは無効であるから飲むな』と言うことを公式に述べることはできないのです。既にこれらを飲んでいるかたの場合は、ご本人が判断し、有効でないものは続けないようにしていただきたいと思います。 〜日本整形外科学会ホームページより〜
グルコサミン・コンドロイチンは効くのか?
これはThe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEという、世界で最も権威のある論文の1つだそうです(2006年2月)。
結果は「軟骨の成分であるグルコサミンやコンドロイチンをサプリメントとして摂取しても軟骨が再生したり痛みがやわらぐことはなさそう」「このようなサプリメントは胃や腸の消化液で粉々に分解されるだけではないでしょうか」
変形性膝関節症の痛み対しては、鎮痛剤(飲み薬)またはヒアルロン酸やステロイドの関節注射がいいようです。〜ゆうしん内科クリニックホームページより〜
ヒアルロン酸の効果を得たいのであれば注射がいいようです。でも私の肌感では10人に1人くらいしか改善していないように思います。また改善例を見ても重症な人ほど治っていないように思います。参考にしてみて下さい。